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Cookieレス時代のデジタルマーケティング対応とは   【第2回】販促はどう変わっていくのか
マーケティング 2022.01.07

Cookieレス時代のデジタルマーケティング対応とは  【第2回】販促はどう変わっていくのか

 Web広告は大手プラットフォーマー※1各社が打ち出したCookie規制の流れにより大きな転換期を迎えています。この先、Web広告およびデジタルマーケティングはどう変わっていくのでしょう。西川コミュニケーションズのDX事業部でエンジニアリングとプランニングを統括する近藤都雄へのインタビュー、第2回をお届けします。

 第1回では、Cookieが規制されるに至った背景や、デジタルマーケティングへの影響、そしてCookieレス時代に対応した新たなデータ活用について紹介しました。規制によりユーザーのWeb上の行動を横断的に把握することは難しくなりますが、自社サイト内での情報は引き続き収集可能です。企業はユーザーからの許諾のもとで信頼関係を築きながらデータを収集してくことが重要になるとのお話しでした。
第1回の記事はこちら

Cookieが規制されるからといってユーザーとのコミュニケーションを深めていくようなデジタルマーケティングができなくなるわけではなく、Cookieレス時代を見据えた新たな手法はすでに次々と登場しています。第2回では販促の分野での西川コミュニケーションズの取り組みをお届けします。

※1:プラットフォーマー
Google、Apple、 Facebook、Amazon等「GAFA」と呼ばれる企業に代表される、利用者とサービス提供者を結び付ける基盤(プラットフォーム)となるサービスやシステムなどを提供・運営する事業者のこと。

Web広告とCookieの関係性について

―――まず、Cookieとはどのようなものなのでしょう? 第1回でもお聞きしましたが、改めて教えてください。 
近藤: CookieというのはWebサーバーからブラウザに送られる、小さなテキストデータのことをいいます。はじめてWebサイトにアクセスしたブラウザには、サーバーからセッションID※2と呼ばれるものが割り振られます。このセッションIDが書き込まれたCookieを識別子として、二度目以降のサイトへの訪問時には、同一ブラウザつまり同一人物からのアクセスであることを、Webサーバー側が判別するという仕組みになっています。

※2:セッションID
Webサイトやアプリケーションなどで、通信中の利用者を識別するために付与される固有のIDのこと。

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このCookieを利用して訪問者のサイト閲覧データを横断的に取得し、インターネット上でその人がどのように行動しているかを把握することができます。ユーザーに合わせたコンテンツを出し分けるターゲティング広告はこのCookie技術によって可能になったものであり、デジタルマーケティングにおいてはごく一般的に利用されてきたデータです。

―――Cookieの中でも規制の対象となるのはサードパーティーCookieであるというお話でしたが、これはどういうものでしょう?
近藤: サードパーティーCookieとは、Webサイトの事業主体者とは別の第三者、この場合は主に広告会社やマーケティング会社が発行するCookieのことを指します。これらの会社が取引先のサイトに設置した広告枠や計測タグを通して訪問者に付与されます。
 サードパーティーCookieが問題視されているのは、サイト訪問者にとっては自らの閲覧履歴データが同意なく広告ビジネスに使われているのではないかという懸念があるからです。
Webサイトの事業主体者がユーザーからの利用許諾をもとに集めるファーストパーティーCookieとは違い、サードパーティーCookieはデータのデジタルマーケティング活用への許諾が曖昧です。Googleがいち早くこの問題に懸念を示し、2023年までにサードパーティーCookieを廃止すると発表しています。


―――これによってデジタル広告は転換期を迎えているわけですね。
近藤: Google以外にも、ブラウザやデバイスを提供する多数の会社がこの動きに追随しており、サードパーティーCookieはいずれ使えなくなると考えて間違いありません。
 となればこれまでサードパーティーCookieを利用して配信していたターゲティング広告も使えなくなるということで、この動きはWeb広告に大きなインパクトを与えました。

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大手プラットフォーマーのさらなる台頭と、広告手法の変化

―――Cookie規制の動きに対し、大手のプラットフォーマーはどのように対応しているのでしょうか?
近藤: Cookie規制の対象には、ファーストパーティーCookieは含まれていません。Yahoo!や楽天、LINE、Facebookといった大手のプラットフォーマーはこのファーストパーティーCookieにより取得したデータ、つまり自社ユーザーの膨大なデータをマーケティングに利用できるように整備を進めています。

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自社ユーザーで作り出した独自の経済圏の中でのユーザーの行動をデータ化し、広告に活用していくことが、大手プラットフォーマーの今後の主流になってくるのではないでしょうか。中でもサードパーティーCookieを利用したターゲティング広告に代わるものとして注目されているのが、コンテキストマッチング広告です。

コンテキストマッチング広告

「履歴」ではなく「今、見ている」広告の露出先や広告素材への反応から興味属性を割り出し、最適な広告を配信するもの。
興味属性情報と、Yahoo!ならYahoo!、楽天なら楽天の社内外に蓄積された情報とを合わせて分析することで、広告に対するユーザーの深い意図を導き出すことができる。


―――自社データの利用となれば、大手のプラットフォーマーが断然有利となりますね。
近藤: ユーザーの囲い込みがさらに進むのではないでしょうか。さらには大手プラットフォーマー同士が手を組んで、データをそれぞれ活用できるような形をとってくるとも予想しています。
中でも重要になってくるのが大手プラットフォーマーと、SNSプラットフォーマーとの結びつきです。大手プラットフォーマーの自社データと、SNSのキーワード分析とを組み合わせることで、モーメントを捉えた広告などさまざまな展開が可能になると思います。

販促でも重要なファーストパーティーデータの活用

―――自社データといえば当然、出稿する広告主も持っているわけですが、こちらのデータの活用も進むのでしょうか?
近藤: もちろんです。広告主にとっても自社のユーザーデータの収集は今まで以上に重要になってくると考えられます。もともと企業が自社のユーザーデータを把握するというのは基本中の基本だとは思いますが、大手プラットフォーマーのユーザー囲い込みが進む中では、自社のデータと大手プラットフォーマーのデータとのマッチングが不可欠になってくるのではないでしょうか。


―――広告主とプラットフォーマーのデータをマッチングにより、どのような広告展開が可能になるのでしょう?
近藤: ユーザーの行動や特性に関して、より精緻な分析による広告配信が可能になります。中でも注目されているのはID連携とアドレサブルターゲティング広告です。

ID連携

広告主が所有するユーザーのIDと、大手プラットフォーマーが収集したユーザーデータを連携させ、精緻な分析をもとにより効果的なターゲティング広告を配信する。

アドレサブルターゲティング広告

大手プラットフォーマーのユーザー登録時に使ったメールアドレスと、広告主がメールマガジン等々で取得したメールアドレスをマッチングさせ、ユーザーがどのような活動をしているかをそれぞれに分析。そのメールアドレスをお持ちの方に適した広告配信を行う。

特にメールアドレスは一人ひとりのユーザーに固有のものであり、閲覧するサイトや利用するサービス、もしくはPCやスマホといった利用端末が変わってもアドレスは同じことがほとんどです。クロスデバイスでのターゲティングに関しても、実はCookieよりも簡便に実施できる可能性というところに期待が持たれています。


―――今後はこういった精緻な分析による広告が主流になるのでしょうか?
近藤: そう考えています。ただ一点、問題となるのは、これらはユーザーをかなり特定した配信であることです。マッチングできたメールアドレスやIDへのターゲティングになるため、配信可能なメディアは限られてしまいます。
配信できるデータをお持ちのプラットフォーマーによって配信の規模が変わるので、Cookie時代のそれと同様の規模感を出すのは難しいのが事実です。


―――リーチや認知が目的となるような、大規模な広告は今後は難しくなるのでしょうか?
近藤: 精緻な分析を行うターゲティング広告では難しいと考えています。しかし、大規模な広告がまったくできなくなるわけではありません。それらはユーザークラスターに応じた広告配信という形になっていくと思います。
例えばCDPなどを活用して、ECサイトで商品を買っている人やキャンペーンに応募している人の属性、そしてアンケート結果などからユーザーの行動を捕捉します。それをもとにユーザークラスターを作り、クラスターごとにマッチした広告媒体を選んでいくというやり方です。


―――その場合もやはり、自社データの収集が重要になるということですね。
近藤: そのとおりです。自社のユーザーデータ分析によるユーザークラスターの構築が欠かせません。カスタマーサービス/商品部門でのLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)分析とファーストパーティーデータ活用による優良顧客理解に基づくデータを、マーケティング部門へとフィードバックすることで、広告の出稿や見込み顧客の育成に活かす手法が必須となります。

こういったクラスターに合ったメディアへの配信、そしてより精緻な分析でユーザーを特定して行うターゲティング広告。このふたつがCookieレス時代の柱として活用されていくと考えています。

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Cookieレス時代に対応する西川コミュニケーションズのデジタルマーケティング

―――西川コミュニケーションズとしてはこの状況にどう対応していくのでしょう?
近藤: まずひとつめはコンテキスト型広告やユーザーの行動を捉えたSNS広告への対応です。これまでも対応してきたのですが、Cookieレス時代を見据えてより一層、力を入れていきます、

それから、現在はまだ規制されていないので、サードパーティーCookieを利用した行動ターゲティングも引き続き行っていきます。もちろん単にこれまでのやり方を続けるというものではなく、ファーストパーティーデータの蓄積のための広告となります。Cookieレス時代到来を見据えたターゲティング広告を実施していきます。


―――どちらもこれまでの対応の延長線上にあるものという印象ですが、Cookie規制前と大きく変わる部分がありますか?
近藤: 大きく変わるのはDMPを活用した分析ですね。サードパーティーCookieを活用したWeb広告では、ユーザーがどのようなサイトを横断しているのか、どのような属性を持つ人なのかをDMPを活用して判断することが可能でしたが、今後はそれが難しくなります。

それに代わるユーザー情報の取得方法として我々が考えているのは、MROC等の高度なアンケート施策です。ユーザー嗜好や行動を把握するアンケートを広告主様が自社で行い、自社データとして蓄積していくことが重要なのではないでしょうか。もちろん企画から実施まで西川コミュニケーションズで対応いたします。

サードパーティーCookieの規制は確かに大きなインパクトとなりましたが、だからといってデジタル広告が力を失うわけではありません。今後も市場規模はますます拡大し、重要性を増していくでしょう。
サードパーティーCookieに代わる新たな方法で新しい時代へ積極的に対応していくことが必要であり、今後も西川コミュニケーションズがそのお手伝いをしていけばと考えています。

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近藤都雄

西川コミュニケーションズ株式会社
デジタルトランスフォーメーション・サービス
エンジニアリング/プランニング・ディレクター
SFAシステムを中心にシステムインテグレータとしてシステム開発を担当後、2000年代後半に大手広告代理店でWebコミュニケーションの企画設計業務を手掛けたことで、デジタルマーケティング領域全般において、エンジニアリングからプランニングまでの幅広い領域を経験、2010年代には様々なクライアント企業にデジタルマーケティング施策を提案して成果をあげる。
現在はデジタルトランスフォーメーション事業部にてアドテクノロジー、デジタルメディア、システムソリューションなどを統括。