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3DCG 2025.12.17

デジタルツイン推進の第一歩。Unityで始める実践型人材育成

デジタルツイン推進の第一歩。Unityで始める実践型人材育成
産業界の人手不足の解消や業務の効率化に欠かせないものとして、ますます期待が高まるデジタルツイン。しかし「何から手を付けていいのかわからない」とお悩みの企業も多いのでは。

そんな企業の最初の一歩としてお勧めするのが、西川コミュニケーションズが提供するUnity⼈材育成プログラム「DIGITAL TWIN ACADEMY」です。

なぜリアルタイム3Dエンジン「Unity」をお勧めするのか。プログラムを通して何を学んでいただけるのか。そしてデジタルツインの基礎や推進の課題などについて、DIGITAL TWIN ACADEMYで講師を務める尾野貴敏に話を聞きました。

デジタルツインとは? 注目が集まるその背景

―――まず、基本的なところから確認させてください。デジタルツインとは何でしょう。
尾野: 現実世界から収集したあらゆる情報・データをもとに、仮想空間上に現実空間を再現する技術の総称です。現実世界とそっくりな「双子」の3次元モデルを仮想空間上に作り出すことから、このように呼ばれています。

例えば製品や工場、製造設備のデータ、それらの運用データやさらには環境データといった多様なデータを組み合わせ、仮想空間上に限りなく現実に近い工場を作り上げることができます。


―――なぜ産業の分野でデジタルツインが期待されているのでしょうか。
尾野: 背景にあるのはDXです。産業界でもさまざまな業務プロセスをデジタル技術に置き換えていくことが急速に進んでおり、中でも期待されているのがデジタルによるシミュレーションなんです。

例えば工場で生産ラインを変更するとなると、既存の工場に新たな設備がちゃんと入るのか、作業性のいいレイアウトはどうなるのかといったシミュレーションが必要になります。しかし、これらを実際の工場内で行うことは容易ではありませんよね。また、既存の生産ラインで最適化や予知保全、品質管理といったさまざまなシミュレーションを行うのも同じくです。

そこでデジタルツインが活躍するんです。仮想空間上で現実に限りなく近い高度なシミュレーションを行うことが可能ですから。


―――産業分野での普及はどのくらい進んでいるのでしょうか。
尾野: 少し前まではどこも「デジタルツインで何ができるか」を探っていたような状況でしたが、最近では大手企業の中からようやく明確な目的をもってデジタルツインに取り組む企業が現れ始めた印象です。

とはいえ、海外に比べると日本はまだこれからといった印象ですね。DX自体が日本は海外に比べて遅れていると言われています。世界各国のDXの進展度を比較する国際的な調査でも、日本は順位が伸び悩んでいるんです。


―――日本で伸び悩んでいるのはなぜでしょうか。
尾野: デジタルツイン導入に関していえば、よく挙げられる課題としては初期投資の高さや社内システムとの連携の難しさがあります。それから、人材不足。デジタルツインの活用には、IoTやAIといったさまざまなテクノロジーが求められます。これらのノウハウを持つエンジニアが不足しているんです。

一時期は私たちのところにも「エンジニアを派遣してほしい」とか「ツールの操作を教えてほしい」といったお問い合わせが、開発案件のご相談よりも多かったくらいなんですよ。

そういったニーズにお応えするために生まれたのが、Unity人材育成プログラム「DIGITAL TWIN ACADEMY(デジタルツインアカデミー)」なんです。

教壇に立ち、受講者に向けて話している尾野アカデミーで講師を務める尾野


デジタルツイン構築の第一歩、Unity人材育成プログラム

―――では、DIGITAL TWIN ACADEMYについて教えてください。
尾野: デジタルツインの構築に使われるリアルタイム3Dエンジン「Unity」の基礎について学んでいただくための人材育成プログラムです。Unityを初めて触るという方から、Unityを使ってこれを作りたいという目的がすでにある方まで、現場での活用を前提にした実践的な内容を学んでいただけます。

・完全オフライン形式(会場は西川コミュニケーションズ名古屋本社)
・最大5名様までの少人数制
・講師は製造業DXの実務経験を持つ当社スタッフが担当
・カリキュラムは初級編と複数の中級コースからお選びいただけます

DIGITAL TWIN ACADEMYについて詳細はサービスページをご覧ください
DIGITAL TWIN ACADEMY Unity人材育成プログラム

大きなモニターを見ながら講師の話を聞いている三人の受講者の様子 受講者の手元にあるPCの画面。Unityの操作画面が映っている
実際の講座の様子


―――なぜ、Unityを学ぶことがデジタルツインの人材育成につながるのでしょうか。
尾野: Unityはもともとゲーム開発のためのツールです。一般的な認知としてはゲームエンジンですから、ゲーム業界にはエンジニアがいるんですが、産業活用できる人材は不足しているんですよ。

そもそもの企業の人手不足という問題もあります。どの企業でも「自分たちでシミュレーターを作って、仕事のやり方を変えていこう」というDXの機運が高まっているのですが、そのためのノウハウを持つエンジニアが社内にいない。だからといってすぐに新たにエンジニアを採用するのも少子高齢化の現代ではなかなか難しいので、今いる従業員に新たなスキルを学んでもらおうという動きがあるんですね。


―――こういった講座は他社でも提供しているのでしょうか。
尾野: Unityの講座自体はよくあります。ただやはりゲームの制作を学ぶものが多く、デジタルツイン推進を目的とした講座はあまり見かけませんね。

それに、受講期間が短いことも大きな特徴です。DIGITAL TWIN ACADEMYは初級編なら2日が基本。中級編も基本は短期間で集中して学んでいただきます。これも私が知る限りほとんどありません。


―――基礎に絞っている理由はありますか?
尾野: デジタルツインでできることは多岐にわたりますから、そのすべてを学ぶことはできません。それに長期間の受講となると業務の都合もつけづらいと思います。

DIGITAL TWIN ACADEMYは、受講後、ご自身でさらに学習を深めていただけるような基礎固めができるようにと設計してあります。デジタルツインに取り組む最初の一歩としてお勧めしているんです。

頭にヘッドマウントディスプレイを装着し、手にコントローラーを持って仮想空間上のコンテンツを操作している受講者の様子 受講者の前で説明している尾野
簡単なプログラミングを行い、ヘッドマウントディスプレイで動作を確認していただきました


―――これまでどういった方が受講されているのでしょうか。
尾野: 現状で多いのは工場の生産技術系の部署の方です。スキルレベルはさまざまで、Unityに触るのも初めてという方も、すでにUnityでVRの安全教育プログラムを内製しているという方もいらっしゃいました。プログラミング経験者の方の中には「独学でプログラミングをしてきたので、正しいやり方が身に付いているのかわからない。改めて基本を学びたい」と受講してくださる方もいらっしゃいましたね。

デジタルツインやUnityにすでに一定の理解を持つ企業が中心ではありますが、一方で「まずUnityで何ができるのかを聞いてみたい」という声も多くいただいています。そうした企業向けには、さらに初級の入門編として無料の講座も実施しているんですよ。


―――そちらはどういった講座なのでしょうか。
尾野: デジタルツインとは何かといった基礎の部分や最新の事例、そしてUnityで何ができるのかを、1時間ほどでご紹介します。当社または依頼主のもとにお伺いして実施します。ご要望に応じて実際にUnityを操作していただく簡単なハンズオンセミナーを実施することも可能です。

企業だけでなく大学からご依頼いただくことも多く、Unityを知る最初のステップとして多くの方にご参加いただいています。

プロジェクターから投影された映像を背後に、大学生の受講者に向けて説明している尾野 大学生に個別に説明しているNICOスタッフの様子
大学でのハンズオンセミナーの様子。
はじめてUnityに触るという学生に、スタッフがサポートしながら体験していただきました


―――それだけUnityやデジタルツインへの興味関心が高まっているということですね。
尾野: それは感じますね。無料講座をきっかけに、アカデミーの本コースに進んでいただく企業もあるんですよ。

ただ、技術習得への意欲は高まっていますが、実際の導入となると別の課題も見えてきます。技術習得の次に、もうひとつ壁があることも感じているんです。


エンジニアと非エンジニア。 推進の鍵となる2つの役割

―――デジタルツイン導入の壁ですか。それはどういったものでしょう。
尾野: デジタルツインを推進するリーダーの存在が不可欠だということです。仮想空間に現実世界を再現しても、それだけで課題の解決にはなりません。やはりそこでシミュレーションにつなげなければ。

そもそもシミュレーションの方法はさまざまにあり、デジタルツインが常に最適解というわけではありません。数ある技術のうち、この課題を解決するためにデジタルツインを取り入れよう、という判断をできる人が必要なんです。


―――つまり、課題と技術をマッチングできる人が必要になる、というわけですね。
尾野: 例えば半導体の製造において、特定の工程でミスが発生するとします。それを解決するためにはどうすべきか?

AIで推論させるのがいいのではないか→そのためにはどんなデータが必要か→それならデジタルツインが有効かもしれない。こうした流れで取り組むのがやはり理想的です。「デジタルツインで何ができるのか」という考えが先行してしまうと、大概行き詰まります。マーケティング用語で言うところの「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の考え方ですね。

こういった判断をするのは、データを扱いながら業務と技術を結びつけられる、つまりデータサイエンティストのような役割ですね。


―――現在はそのリーダーが不足している、と。
尾野: もちろん、デジタルツインを構築するエンジニアは必須です。しかしリーダーもいなければ推進していきません。これは両輪なんです。エンジニアとリーダー、どちらも揃って初めてデジタルツインは機能します。

さらに言えば、協力会社とデジタルツインを構築する場合、ゲームエンジンで何ができるのかという知識も必要になります。

エンジニアに制作を依頼する立場の方にとっても、Unityの基本的な理解を得ていただくことはやっぱりお勧めなんです。

企業での講座の様子。会議スペースに並んだ受講者に尾野が説明している 説明を聞きながらUnityを操作する受講者の手元
企業様での講座の様子。この講座でもUnityの簡単な操作を体験していただきました


産業DXに向け、アカデミーから始まる次のステップ

―――では、DIGITAL TWIN ACADEMYは、エンジニアの方にも、非エンジニアの方にも、デジタルツインへの第一歩ということなんですね。
尾野: そうですね。デジタルツインの活用度合いは企業によって本当にさまざまです。すでにセンサーやAIを組み合わせた高度な取り組みを始めている企業もあれば、「これから本格的に取り組みたい」という企業も数多くあります。むしろ日本全体で言えば後者の方が多いでしょう。

どこから手を付ければいいのかわからず、最初の一歩が踏み出せないケースも多いんです。DIGITAL TWIN ACADEMYは、まさにその最初の一歩を後押しするための場としてお勧めしています。


―――では、最初の一歩を踏み出したその後は? アフターサービスのようなものもあるのでしょうか。
尾野: もちろん受講いただいた企業に対しては、必要に応じて次のステップもサポートいたします。

実案件としてデジタルツインの構築やシミュレーションを請け負うことも可能ですし、一緒にデジタルツインの構築を進めながら、OJT形式で学んでいただくような展開も考えています。アカデミーは基礎固めが目的ですから、デジタルツイン推進のためにはその後が大事ですね。


―――そうやってデジタルツインを推進することで、西川コミュニケーションズとしてはどういった未来を目指しているのでしょう。
尾野: 先にもお話したように、日本のDXは遅れているといわれています。実際、海外のデジタルツインの事例を見ると、日本はこれからだと感じます。

しかし、それだけ成長余地があるということでもあります。メイドインジャパンの品質は依然として評価されていますし、業務プロセスの改善が進めば、日本の産業はもっと活性化できるはず。私たちが目指すのはこの産業の活性化です。

ご興味のある方は、まずは無料講座からで結構です。お気軽にご相談ください。

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お問い合わせ

尾野貴敏

西川コミュニケーションズ株式会社
MONOZUKURI-X研究所 セールスマネージャー

DTP黎明期からオペレーターとして従事し、その経験を生かしながら新聞・雑誌広告のデジタル化推進プロジェクトに技術要員として参加。
その後、ICTの知識を生かした技術営業として職務したのち、デジタルツイン部に配属。現在は産学官デジタルツインプロジェクトの推進および「DIGITAL TWIN ACADEMY」のセールスマネージャーを担当。同時にUnity人材育成プログラム入門編の講師を兼任。