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DX 2025.11.25

もっと信頼されるために。オフショア開発の品質を支える、NICOインディアの挑戦

もっと信頼されるために。オフショア開発の品質を支える、NICOインディアの挑戦
オフショア開発で大切なのは、安心して任せられるパートナーであること。
西川コミュニケーションズでは、システム開発を主業務としたグループ会社「西川コミュニケーションズインディア」(略称:NICOインディア)をインドに設立し、オフショア開発を積極的に推進しています。

グローバルな技術力の活用や新しい価値創出のためのパートナーシップが期待される一方で、オフショア開発には言語や文化、ビジネス慣習の違いからプロジェクトの進行に思わぬ課題が生まれることもしばしば。

西川コミュニケーションズではそうした課題をどう乗り越えているのか? 今回は、インドと日本の橋渡し役として現場を支えるNICOインディアのブリッジSE、リスブッド・ラフルにインタビュー。NICOインディアの成り立ちから開発の現場、日本との連携、そして未来の展望までを聞きました。

NICOインディアとは? 設立の背景と開発体制

―――まずはNICOインディアについて教えてください。
ラフル: NICOインディアは西川コミュニケーションズ(以下、NICO)のグループ会社として2011年に設立されました。拠点はインドのプネー(PUNE)という都市にあり、在籍しているスタッフはすべてインド人。正式名称は「Nishikawa Communications India Pvt. Ltd.」です。
NICOとそのグループ会社が手がける業務のうち、システム開発が必要な案件をインドからサポートしています。

プネー(PUNE)
金融と経済の中心であるムンバイと同じマハラシュトラ州に位置する大都市。多くの高等教育機関を抱える学術拠点であり、近年ではIT産業の成長も目覚ましい地域です。インドでもっとも日本語教育が盛んな地域としても知られています。


―――オフショア開発の委託先といえばベトナムや中国の企業が多い中、なぜNICOではインドにグループ会社を設立したのでしょうか。
ラフル: もともと私がプネー出身なんです。インドでエンジニアとして働いていたころ、とある開発案件でNICOに関わったことをきっかけにNICOに入社し、2004年に来日しました。

その後、日本の企業がインドに設立した現地法人に対してシステム開発の提案をする機会があり、提案のため何度もインドに通ううちにプネーに会社を作ろうとなったんです。


―――それでインドにグループ会社ができたのですね。日本とインドでどのように開発を進められているのでしょうか。


ラフル: クライアントから受注した案件の場合では、まず日本で営業担当が先方の要望を聞き取り、提案書を作成します。その提案書をもとに私が見積もりを作成し、内容に問題がなければ開発がスタートします。

インドのチームへは私から指示を出します。プロジェクトの概要や目的、やるべきことをエンジニアたちに説明し、データベースやプログラムの設計をメンバーと一緒に進めていきます。
開発が終わると、まずテスターがテストを行い、その後に私が最終チェックを行います。問題がなければ、日本の担当者へ納品するという流れです。


―――それらのやり取りは何語でされているんですか?
ラフル: 日本とのやり取りはほぼ日本語ですが、NICOインディア側の開発はすべて英語で行っています。NICOインディアで日本語がわかるのは私だけなんですよ。

日本から送られてくる資料はまず私が英語に翻訳して、必要なことをインドのスタッフに伝えます。そして英語で作ったものをまた私が日本語に翻訳し、日本に戻すというやり方をしています。

もっともやり取りが多いのはNICOの浜松支社ですが、他拠点やグループ会社からの開発案件も受注しています。

【NICOインディア 開発の実績例】
●在庫管理+受発注システム
数千点以上にもなる販促物の在庫管理、全国の担当者からの受発注をWebベースで対応できるシステム

●Webキャンペーンシステム
応募型Webキャンペーンサイトにおける応募の受付と、応募の内容を一元管理できるシステム

●GIS※マーケティング配信システム
地図上に国勢調査等の情報をプロットし、マーケティングに活用できるシステム
※GIS:地理情報システム(Geographic Information System)。位置情報を持つデータ(地理空間データ)を総合的に管理・加工し、地図上に視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。

●NICOおよびグループ会社の自社サービス
ロジックデータ管理システム「LRuCA」
複雑なパーツで構成されるCGの組⽴⼯程や、販売の仕様に合わせた組み換え⼯程すべてを⾃動的に構築するシステム。

マーケティング投資の最適化ソリューション「MEDIA CANVAS」
マーケティング効果の把握、最適な投資配分の算出、将来の成果シミュレーションをWebアプリ上で実現するソリューション。

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緑に囲まれたNICOインディアのオフィス


文化の違いを越え、日本とインドをつなぐブリッジSE

―――ではラフルさんはまさに日本とインドのブリッジ、懸け橋になっているんですね。普段から日本のスタッフとは密にやり取りされているのでしょうか。
ラフル: はい、三カ月に一回は日本に来ています。以前は一カ月に一回くらいの頻度だったんですが、コロナを機に減りましたね。
その代わり、今はリモート会議で簡単にやり取りできるようになりました。毎日のようにテレビ会議で打ち合わせをしていますし、クライアントとの打ち合わせに参加することもありますよ。それももちろん日本語で。


―――ラフルさんは日本語を使いこなしていらっしゃいますよね。このインタビューも日本語でスムーズにやり取りしています。日本語はどうやって学ばれたのでしょうか。
ラフル: 2004年に来日する前は、インドにある日本語塾に通っていました。ただ、先生がインド人だったので、やっぱり発音や語彙がちょっと違っていて。日本に来たばかりのころは、日本人が話すことがわからなかったんですよ。慣れるまでに一カ月くらいかかりました。


―――やはり、実際に現地で使ってみなければわからないこともありますよね。他には日本にいらしてどうでしたか? 驚いたことなどはありましたか?
ラフル: びっくりしたのは、みんなきちんと並ぶこと(笑)。街もどこも綺麗ですよね。

それから、働き方の違いにも驚きました。特に残業。インドには一般的に残業や残業代という概念がありませんし、勤務時間も固定されていないフレックス制が一般的です。


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日本とインド。感覚の違いにどう対応するか

―――そんなに働き方が違うんですね。そういった文化や認識の違いからくるズレがオフショア開発の課題になるとはよく耳にしますが、NICOインディアでもそういったことがあるのでしょうか?
ラフル: そこはやはりありますね。だからこそ、私のように日本で働いた経験があり、日本の文化や価値観をわかっている人間が間に入っていることは、NICOインディアの強みだと思っています。
私はブリッジSEとして、以下のようなポイントは特によく注意しています。

■言語の壁によるニュアンスのずれ
一番の課題はやはり言語です。技術的な専門用語や日常的な指示のニュアンスにズレが生じやすく、ミスや手戻りの原因になります。

日本からの指示は背景やニュアンスまで汲み取り、なぜ、何のためにその作業が必要なのかまでをインドのスタッフに伝えられるように意識しています。

■デザインに対する感覚の違い
できあがった画面を見て、日本から「文字をもうちょっと大きく」などの細かい修正が入ることがよくあります。日本ではちょっとした見え方の違いにもこだわることも多いですよね。しかし、インドでは「見えてるからいいじゃないか」と考える人が大半です。

日本からの修正指示に対して、開発者から「なぜこの修正が必要なのか?」と聞かれることもあります。そういう場合は、なぜ直す必要があるのか、何のためにその作業をするのかを、開発者が納得できるように丁寧に説明しています。

■品質に対する考え方の違い
インドではだいたい90%できていればいいというのが一般的な感覚です。でも日本では、100%どころか120%の完成度を期待されることが多いですよね。

私がいつもインドのスタッフに説明しているのは、90%できていればいいという感覚を、あと10%引き上げて100%にしてほしいということです。そして日本側にも過剰な期待を引き下げて100%にしてもらいます。そうすると、お互い納得できる品質のものができあがります。

■スケジュール感覚やそれを守ることの感覚の違い
インドの会社はたくさん仕事をもらいたいからと納期を実際よりも短く伝えがちなんですが、それをきちんと守らないと、日本のクライアントからは信頼を失ってしまいます。

スケジュールはクライアントも開発側も一番気にするところですよね。インド側で開発にかかる日数や、日本からの急な修正の依頼などにどう対応するか、そういったスケジュールの調整も私の役割です。


―――ラフルさんが日本からの要望と開発の現場の間を取り持つことで、誤解やすれ違いを未然に防いでいるんですね。
ラフル: ただ、今はこれで十分対応できているんですが、今後さらに受注を拡大していくためには、もっと効率化したいところです。そのために現在、NICOインディアではAIを活用するシナリオを探り、さまざまなツールを試しています。

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AI活用で広がるNICOインディアの未来

―――生成AIを使うことで開発はどう変わるのでしょう?
ラフル: まだ検討段階ではありますが、コード生成やレビュー、テストケース作成、ドキュメント作成などの定型的な業務をAIで自動化できると考えています。日本語/英語間のリアルタイム翻訳や、ドキュメントを日本語と英語の両方で作成するなどもできるようになるでしょう。

実際にとあるプロジェクトでテストしてみたんですよ。日本側で作成したキャンペーン用入力フォームのデザインを生成AIに渡したら、HTML・CSS・JavaScriptなどのソースコードに、設計仕様書やテスト仕様書まで自動で生成してくれました。全体の8割ほどのアウトプットが自動生成され、人の手で調整・確認が必要だったのは残りの2割ほどです。デザイン以外は何も渡していないのに、ですよ。


―――そこまでできるとは驚きですね。
ラフル: かなり使えると感じています。開発は大幅にスピードアップできますし、スケジュールに余裕が生まれることで質を上げていくことにも注力できるようになります。開発現場だけではなく、クライアントにも大きなメリットになりますよね。

ただし、大規模なプロジェクトに全面的に適用するのはまだ難しそうです。まずはプロジェクトの中でタスクを分けて部分的に使うというやり方になると思います。


―――他社でもそういった手法は検討されていたり、すでに使われていたりするのでしょうか?
ラフル: 海外、特にアメリカではすでに使われていると思います。日本ではまだそこまで浸透している印象はありません。

私たちもまだまだ検討段階です。ここまでできるというのはわかっているので、それを実際に仕事に落とし込んだ時にどうなるのか? 一緒にチャレンジしていただけるクライアントとの実証案件を通して、現場への実装を進めていきたいです。


―――AIは今後さらに活用の幅が広がりそうですね。他にもチャレンジしたいことはありますか?
ラフル: そうですね。たとえば、日本でうまくいっている商品や仕組みを、インドで再現できないかと考えています。逆に、インドで成功したモデルを日本に展開するという形もおもしろいですよね。

また、今までは受託開発で「依頼されたものを作る」スタイルが中心でしたが、自分たちで商品やサービスのアイデアを出し、サービスとして売り出すこともやってみたいです。


―――今後もNICOインディアは意欲的に活動が続くようですね。
ラフル: 新しい技術はどんどん試してみたいんです。AIをもっと実践的に使いこなせるようにしていきたいですね。
そしてAIで効率化ももちろん大切ですが、それと同時に、日本とインドの両方の文化や働き方を理解し、橋渡しができる人材を増やしていくことも欠かせないと思っています。

「オフショアでも、NICOインディアなら安心」。日本のNICOスタッフにも、その先のクライアントにも、そんなふうに感じていただけるチームになっていきたいですね。

リスブッド・ラフル 

西川コミュニケーションズインディア
代表取締役 社長
インドの大学の商学部を卒業後、ITのMBAを取得し、日本語能力試験(JLPT)のN2 に合格。2004年に西川コミュニケーションズに入社し、その後IT事業部でさまざまな設計と開発を担当。2011年からはNICOインディアでブリッジSEとしてインドと日本の間を取り持ちながら、NICOインディアの管理も行っている。