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子ども食堂でも大人気。地域の教育格差解消を目指して生まれた、NICOのプログラミング体験会
SDGs 2024.04.22

子ども食堂でも大人気。地域の教育格差解消を目指して生まれた、NICOのプログラミング体験会

西川コミュニケーションズ(以下、NICO)では、数か月に一度の割合で本社ビルにて「ニコっと こども食堂」を開催しています。ここで人気を博しているイベントが、子ども向けのロボットプログラミング体験会。実はこのイベント、NICOがクライアントの店頭イベント用に事業化しているサービスメニューでもあります。

背景にあるのは、プログラミング教育の必修化とともに拡大していた子どもの教育格差の課題。子どもの支援に関わりたいと考えていたNICOでは、とある自治体からの相談を受け、プログラミング体験会の実施に至りました。

今回はその体験会で講師を務める鈴木貴博にインタビュー。子ども食堂での体験会の様子や事業化までの道のりについて話を聞きました。


楽しみながらプログラミングに触れていただく体験会

―――まずは「ニコっと こども食堂」でのお話を聞かせてください。すっかり人気のイベントになっていますが、なぜ子ども食堂でプログラミング体験を実施されているのでしょうか。
鈴木: 一般的に子ども食堂というと、子どもに食事や団らんの場を提供することを目的としていますよね。「ニコっと こども食堂」は、さらに「教育」というキーワードを掛け合わせることで、NICOと地域との新たなつながりを生み出すことを目的としています。ワークショップやミニゲームなどのお楽しみイベントも盛りだくさんになっており、子ども向けのプログラミング体験会もその中のひとつとして実施してきました。

ニコっとこども食堂の開催の様子はこちらから
息子と一緒に第3回"ニコっとこども食堂"に参加してみた!|つつつ@西川コミュニケーションズSDGs


―――ここではどんな体験ができるのでしょう。
鈴木: 基本的な流れは、モーターやセンサーが取り付けられたブロックを組み立ててロボットを作り、それをプログラミングで思いどおりに動かしてみるというものです。例えばボウリングマシーンを作るカリキュラムでは、大きなアームを動かしてボールを投げ、狙い通りにピンを倒せるかといったミッションにチャレンジしていただきます。

小さな子どもがブロックでロボットを組み立てている手元と、それをサポートする大人の手元手前に組み立てたロボット。その奥にはタブレットでプログラミングをする子どもの手元
体験中の様子。組み立てたロボットは、タブレットでプログラミングして操作します

―――ロボットを動かすというのは視覚的にもわかりやすく、お子さんの興味も引けそうですね。難易度はどのくらいでしょうか。
鈴木: 入門レベルの内容になっています。5~10歳くらいの、初めてプログラミングに触れるお子さんが対象ですね。

プログラミング言語といえば、一般的にはPHP、JavaScript、Pythonなどが知られていますよね。この体験会ではそういったソースコードを記述する本格的なプログラミング言語ではなく、視覚的にプログラムを構築できるビジュアルプログラミング言語を使っています。

ブロックなどの視覚的なオブジェクトにあらかじめコンピューターへの命令が書かれており、このオブジェクトの組み合わせを変えることでロボットの動きが変化していきます。複雑なソースコードを記述する必要がなく、プログラミングに初めて触れるお子さんでもチャレンジしやすいんですよ。

ビジュアルプログラミング言語の操作画面が表示されているタブレットの画面ビジュアルプログラミング言語の操作画面。ブロック(緑色の部分)を組み合わせることで、ロボットの動きが変わります

―――プログラミングといえばソースコードを記述するイメージが強いですが、そんな方法もあるんですね。それなら小さなお子さんでもできそうです。
鈴木: 参加者の中にはひとりでブロックを組み立てるのは難しいような年ごろのお子さんもいらっしゃいますが、楽しそうにロボットやタブレットに触れていただいています。

この体験会自体、本格的なプログラムを学ぶことが目的ではないんです。自分で組み立てたロボットを思いどおりに動かすという楽しさを通して、プログラミングとはどういうものかという考え方の部分を、遊びながら学んでいただければと思っています。

テーブルの上に置いてあるペーパー資料の紙面。プログラミング言語は何種類あるのかというクイズが書かれているタブレットを操作してプログラミングする子どもの手元と、それをサポートする大人の手元
体験会はプログラミングの考え方の解説からスタート。プログラミング方法もNICOスタッフが丁寧にレクチャーします

―――そしてこの体験会は、NICOのサービスメニューのひとつでもあるということですね。
鈴木: そうなんです。元々はとある自動車メーカー様の自動車販売店向けに、親子で楽しんでいただける店頭イベントとして開催しませんかとご提案してきたサービスです。2021年にサービスインして以来、現在も継続して開催しています。


―――内容は子ども食堂での実施時と同じものでしょうか?
鈴木: コンテンツはまったく同じです。ただ、参加者の年齢層が違うため、進め方は少し変えていますね。年齢層が低めの子ども食堂は、楽しみながらプログラミングに触れていただくことをメインにしてわいわいとやっていただいています。一方、年齢層が高めの自動車販売店での開催時には、プログラミングとは何かという部分を理解していただけるような、より教室的な進め方にしています。

ブロックを手にして説明する講師の様子体験会で講師を務める鈴木さん


背景にあるのは、子どものプログラミング教育の地域格差

―――なぜ、NICOがプログラミング体験会を手がけるようになったのでしょうか。
鈴木: きっかけとなったのは2020年、当社の会長がとある地方の自治体を訪問したことでした。そこで、子どものプログラミング教育に地域格差が生れてしまっているという現状をお聞きしたんです。

ちょうどその年から小学校でプログラミング教育の必修化がスタートしていました。しかし学校側の体制が整っておらず、指導する教師の知識不足や、学校のICT環境の不備が課題になっていたんです。これらのことは全国的にも話題になっていましたよね。


―――先生自身にプログラミングの経験がなく、知識も足りない状態なのに、子どもに教えなければならないという問題はよく耳にしましたね。
鈴木: 都市部ならまた事情が違ったんですよ。子ども向けのプログラミング教室なども登場し始めていて、知識の豊富な指導者の下でプログラミングに気軽に触れる機会が作りやすくなっていました。ところが地方の郊外となると、そういった学びの環境がほとんどない状態でした。

訪問した自治体では、進む過疎化や高齢化への対策として若い世代の人材育成に積極的に取り組まれていたのですが、中でも大きな課題となっていたのが子どものプログラミング教育でした。環境の違いで生まれてしまう子どもの教育格差を、何とか解消していきたいというお話を伺ったんです。


―――NICOとしても子ども支援に関わりたいという声は以前からありました。お聞きした課題と社内の声が合致した結果なのですね。
鈴木: そうなんです。しかもNICOの得意先にプログラミング教室の運営をされている企業様があるため、そちらにご協力いただければ課題解決のお力になれるのではないか、と考えました。

ただ、この時点では体験会ではなく、常設の学校を開校することを考えていたんです。ところがやはり、プログラミング教室の運営をされている企業様にご相談してみたところ、人口の少ない地方では収益化が難しいとなりまして。


―――地域による教育格差が生れている原因もそこにあるわけですね。
鈴木: 実際に試算してみてその難しさがよくわかりましたね。すでに教室のある都市部から定期的に講師を派遣していただくなどの方法もさまざまに考えたのですが、結局、教室ではなく、体験イベントという形で開催を目指すことになりました。

となると次に出てくる問題は、どこで開催するかです。ここでもまた、NICOの得意先である自動車メーカー様にお声がけしてみました。販売店の店頭イベントとしてプログラミング体験会を開催してみませんかと持ちかけたところ、地域の皆さんに喜ばれつつ店頭への集客イベントができるのなら、と歓迎していただきました。

しかも「せっかくだから全国規模でやりませんか」と言っていただいたんです。そこで、最初に課題をご相談いただいた自治体だけではなく、全国の自動車販売店に対してご提案していくことになりました。




全国どこでも開催可能な体験パッケージを開発

―――今のような体験会の形はどのようにして作られたのでしょう。
鈴木: 開催地が全国に広がったことで、どの店舗でも同じように体験会を開催できるパッケージ商品として開発することになりました。

とはいえ当初は今のようにNICOスタッフが講師をするのではなく、プログラミング教室を運営されている企業様に大部分をお任せする予定だったんです。ところがここでも費用の問題がありまして......。プログラミング教室の運営企業様からご提案いただいたプランが、販売店様が普段のイベントにかける予算感の3〜4倍ほどの費用になってしまったんです。相場とはかなりの乖離がありました。

どこかでコストカットしていかなくてはなりません。さまざまに検討した末、進行役(講師)を販売店のスタッフにお任せしようとなりました。


―――プログラミングの経験のない方に講師役をお願いするということですよね。それはかなりハードルが高いのでは。
鈴木: もちろんいきなりやってくださいというのは難しいので、綿密な台本をご用意しましたよ。プログラミング教室の運営会社様に監修をお願いし、年齢層に合った伝え方をレクチャーしていただきながら、そのまま読み上げるだけでOKというレベルまで作りこみました。

トラブル対応なども含めた詳細な運営マニュアルをご用意し、NICOスタッフによる事前のレクチャーもメニューに組み込んで、どなたでも進行役(講師)ができるようなサポートツールをご用意していったんです。
実際に販売店スタッフに講師役をしていただいてトライアルも実施し、ここまでサポートの用意ができていれば大丈夫という自動車メーカー様のお墨付きもいただいて、2021年に全国の自動車販売店に向けて正式にサービスインしました。

ところがふたを開けてみたら、お金がかかってもいいからスタッフを派遣してほしいという依頼がほとんどでした。


―――やはり講師役となると、お金をかけてでも外部から招いたほうが信頼感があるということなのかもしれませんね。
鈴木: 予算がつきやすい周年イベントなどに呼んでいただくことが多かったというのもあると思います。ありがたいことにこれまでにたくさんのお声がけをいただきましたが、結局、ほとんどのイベントにNICOスタッフが講師としてお伺いしました。

実は私も含め講師役のNICOスタッフはもともとプログラミングの専門家ではなかったのですが、綿密な台本を準備してきたことでスムーズに進行できるようになりました。今はもう派遣ありきで、ほぼすべての販売店にNICOのスタッフが講師としてお伺いしています。


―――しかし、それではやはりコストの問題がクリアできていないのでは?
鈴木: NICOとしては、このプログラミング体験会単体で利益を上げるという考え方をしないことにしたんです。あくまで全国の販売店との接点を持てる営業ツールの一環と考え、講師の派遣費用は経費に組み込んでいます。

SDGsの文脈で考えても、企業は利益を出しながら社会に貢献していくことが重要と言われていますよね。支援そのものを事業化して収益を上げることは難しくても、ほかの事業とうまく組み合わせていくことで、継続的な支援をしていければと考えています。



今後も、プログラミングに触れる機会を提供していく

―――では、ほぼすべての体験会でNICOスタッフが講師をしてるんですね。たくさんの現場を経験されていると思いますが、印象的な出来事などはありましたか?
鈴木: 子どもの自由な発想にはいつも驚かされていますよ。用意しておいたミッションをクリアしてしまって、自由な時間ができると、いつの間にかどんどん新しい遊びを作り出していったして。

もちろん大人も負けていません。特にお父さんがお子さんを差し置いて夢中になっている姿をよく見ます(笑)。みんな本当に楽しそうに体験してくれるので、講師をしながら私も楽しんでいるんです。


―――体験会は今後も同じ形で続いていくのでしょうか?
鈴木: その予定です。プログラミング教育の必修化がスタートしてから4年が経ち、教育現場の質も上がってきました。地方にもプログラミング教室は増えており、以前より教育格差は減ってきているようです。とはいえこの体験会も、興味を持ってもらう最初のきっかけとしての役割はまだまだあると思っています。気軽にプログラミングに親しんでいただける場としてお役に立っていきたいですね。


―――自動車販売店以外への展開の予定などはありますか?
鈴木: もちろん、お声がけいただければどこでも行きますよ。店頭のスペースを活用し、地域貢献や集客イベントとして開催いただけますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

「ニコっと こども食堂」でも、不定期ではありますが引き続き開催の予定です。実施の際にはサイトに告知を掲載しますので、お近くの方はこちらもぜひご参加ください。

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お問い合わせ

鈴木貴博

西川コミュニケーションズ株式会社
CGI推進グループ 営業マネージャー

入社後、製造現場・ダイレクトメール事業・資材調達を経て自動車メーカー様など担当し、幅広くSP営業を経験。
2024年からは3DCG事業へ異動し、新たなソリューションサービスの販売を担当。