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社内活動 2025.10.28

従業員に「自分ごと化」してもらうには?企業メッセージを実現に導く行動指針とは

従業員に「自分ごと化」してもらうには?企業メッセージを実現に導く行動指針とは
パーパス経営が注目される今、企業メッセージを「掲げただけ」で終わらせない仕組みづくりが求められています。
西川コミュニケーションズでも、2023年に策定した企業メッセージ「伝えることで、社会をよりよく。」を実現へと導くため、従業員に求める行動をまとめた5つの行動指針を作成しました。
「会社として、このような姿勢で仕事に取り組んでほしい」
会社から発信するこのメッセージが、従業員に自分ごとと受け止められるにはどうしたらいいのか。議論を重ねた策定のプロセスや今後の展望を、策定プロジェクトのメンバーである、広報課の北山景子と人事課の武藤尚子に話を聞きました。

企業メッセージを「自分ごと化」するための、5つの行動指針

―――まず、行動指針とは何かについて教えてください。
北山: 西川コミュニケーションズ(以下、NICO)でいう行動指針とは、企業メッセージを実現するための行動の基本方針です。簡単に言えば「会社として、どのような姿勢で従業員の方に仕事に取り組んでほしいか」を明文化したもの。これがあることで、従業員一人ひとりが共通の価値観のもと、理念の実現に向けて同じ方向に進んでいけるようになります。

NICOでは、2025年8月に行われた全体会議で以下の5つの「行動指針」を発表しました。

「伝えることで、社会をよりよく。」この想いを実現するための5つの行動指針よりよく伝える。持っている知識や常識は人それぞれ。何気なく言った言葉が、思わぬ受け取られ方をすることもある。大事なのは、「伝えた」ではなく「伝わった」か。どんな言葉ならちゃんと相手に届くのか、敬意をもって相手のことをよく考え、自分の言葉の行く先をしっかり見つめながら伝えよう。
いつでも真摯に。もっと柔軟に。スピーディに。さまざまなトラブルを乗り越えてきた、私たちにならできるはず。現場に寄り添って真摯に仕事に向き合い、よりよい方法を模索しながら、困難を乗り越えていこう。そうして最後までやりきってこそ、成果がカタチとなって現れ、社会から信頼される存在となれる。ともに創る。一人ひとりのアイデアをカタチにして、私たちの事業は成長してきた。ここから、さらに一歩踏み出そう。チームを、部署を、会社を巻き込んでともに挑もう。一人ひとりの挑戦とチームの力がひとつになることで、新しい価値が生まれ、社会に大きな変化を起こしていく。
たゆまず挑む。世界は目まぐるしく変わっていく。その速さに、どうしたら追いつけるだろう。もっとできることはないか。今のやり方で本当にいいのか。現状に満足せず、考え続けよう。変化を恐れず、積極的に取り組もう。その積み重ねが、価値ある発信へとつながっていく。学びをやめない。現代社会には新たな知が次々と登場する。常に新しいものを吸収していこう。自分を磨き続けよう。その姿勢は自分を進化させるだけにとどまらない。仲間に新たな学びを呼び、組織全体へと波及する。学びは私たちを強くし、私たちが取り組むすべてのことの基礎となる。


―――なぜ行動指針を作成することになったのでしょうか。

北山: NICOでは2023年2月に「伝えることで、社会をよりよく。」という企業メッセージを策定しています。

企業メッセージ策定について詳しくはこちらの記事もご覧ください
「伝えることで、社会をよりよく。」 企業メッセージに込めた西川コミュニケーションズの挑戦

しかし企業メッセージは浸透こそが難しいんです。作って終わりにしていると飾ってあるだけのいわゆる「額縁パーパス」と言われるものになってしまいます。
NICOでも「コメントリレー」と題して、従業員から企業メッセージに絡めたコメントをいただいて掲載していくという企画をオープン社内報「つつつ」上で実施してきたのですが、これだけではまだまだ十分とは言えません。

「伝えることで、社会をよりよく。」この企業メッセージを実現するために、あなたが持ちたい心がけや、実施したいアクションは何ですか?毎月1回、社内各部署の従業員数名に上記のテーマでコメントをお寄せいただきました


オープン社内報「つつつ」のコメントリレー記事はこちらから
【コメントリレー企画】パーパスを自分事化してもらうためには?|つつつ@西川コミュニケーションズSDGs


そもそも企業メッセージは、さまざまな職種の方に当てはまるように、あえて抽象度の高い表現になっています。より従業員の皆さんが自分の日々の行動に繋げられるよう、「日々の業務でどう行動するべきか」をより具体的に示すものとして、行動指針を作成することになったんです。


従業員の納得を第一に考えた策定のステップ

―――では、行動指針の策定はどのように進んだのでしょう。
北山: 取り組みが始まったのは2025年2月のことです。私が所属する広報課と、武藤さんが所属する人事課が合同でプロジェクトチームを立ち上げました。

武藤: 人事評価の軸とも結びついた行動指針になるよう、人事からの視点を求められて参加しました。
行動指針に沿った取り組みが、適切な評価へとつながらないことがあってはいけませんからね。「NICOが目指す人材像」と行動指針に乖離があってもいけないので、その整合性も重視しました。

―――企業メッセージの開発プロジェクトとはメンバーが違いますよね。それはなぜでしょう。
北山: 企業メッセージは「西川コミュニケーションズがこれから目指していきたい姿」を一言で言い表したものです。新たに開発する際には多様な視点が欲しかったので、さまざまな拠点から従業員に集まっていただきました。しかし、行動指針は「そのためにはこうあってほしい」と会社が従業員に求めるものです。それを従業員が中心になって作るのはちょっと違うかな、と。

なお企業メッセージの開発プロジェクトは浸透プロジェクトと名を変えて今でも活動を継続しています。行動指針に関してもいろいろと意見をいただいたんですよ。従業員の目線で素直な意見を言っていただけたので、とても参考になりました。

武藤: 人事も広報も管理本部の立場で物事を見ることが多いので、事業部の皆さんとは視点が異なる場面があるかなと思っています。浸透プロジェクトのメンバーの意見を聞いて「ああ、なるほど」と気づかされることが多かったです。

北山: そうなんです。広報活動の一環としてプロジェクトを推進する役割の方とお話しすることも多く、そこに登場する方は企業メッセージを意識してお話ししてくださるので、「浸透してきたかな」と感じることもあります。
しかし、浸透プロジェクトのメンバーからは「自分の周りではまだまだですよ」と聞くこともあって、あらためて立場や視点の違いを感じましたね。



NICOらしさが表れた従業員アンケート

―――では実際にどのようにして行動指針を策定されたのかを教えてください。
北山: 会社が一方的に決めたものでは「自分たちには関係ない」と感じてしまう人もいると思います。一人でも多くの人に納得感を持っていただけるものになるよう、従業員の声が反映されたものであることを目指しました。
具体的には以下のようなステップを踏んでいます。

1:従業員にアンケートを実施
 現在、NICO社内で大切にされている行動や姿勢を明らかに
2:人事施策を整理
 会社として大切にしている行動や姿勢を明らかに
3:1、2をもとに行動指針の要素を抽出。素案を作成
4:部長職以上の方に素案を評価していただく


―――アンケートから従業員の声を拾ったということですね。どのような質問をされたのでしょうか。
北山: 日々の業務で大切にしている行動や姿勢を答えてもらう自由記述や、「まずは行動してみる」と「じっくり考えて行動する」ではどちらがNICOらしいと感じますかといった選択式の設問も含め、全5問の構成でした。

Q1:日々の業務で大切にしている行動や姿勢(自由回答)
Q2:「NICOらしい」と感じる行動や価値観(選択回答)
Q3:Q2で選択した理由や補足、関連する具体的なエピソード(自由回答)
Q4:Q2以外のNICO社員やNICOのイメージ(自由回答)
Q5:NICOをもっとよい会社にするために賞賛すべき行動や価値観(任意回答)

驚いたのが、回答率がとても高かったこと。関心を持ってもらえているのだと感じました。

武藤: 人事からも日頃さまざまなアンケートをお願いしていますが、それと比べても高い回答率でした。
しかも、自由記述の回答もかなりしっかり書いてくださっていたのが印象的でした。書かれている内容も前向きな言葉が多かった印象です。

北山: そうなんです。「学び・変化・挑戦」といった、NICOの人材育成や成長を語るうえで欠かせない姿勢がしっかりと社内に浸透していると感じました。

―――全体的に同じような傾向だったということでしょうか?
北山: もちろんまったく違った答えも多くありましたよ。特に、どちらがNICOらしいと感じるかを尋ねる選択式の質問では、
「丁寧さを優先する」か「効率を優先する」
「チームワーク」か「個人のスキル」
という質問への回答がほぼ50%:50%でした。

武藤: ここは部署の特色が出ているんでしょうね。NICOでは部署によって業務内容がまったく異なるので、何を重視するかも変わってくるのも頷けます。あと、直近で起こった出来事に印象が左右されることもありそうです。

北山: そうなんですよね。だからこそ、全社共通の言葉をつくるのはとても難しい。けれどそれがまた行動指針の意味をより深くすることにもつながったと思います。

二択式の質問で回答が多かったほうはどちらなのかと、それが全体の何パーセントだったかを示したグラフ。臨機応変に対応する77%、スピード感を持って進める71%、まずは行動してみる70%、相手を思いやりながら伝える68%、新しい価値観を作る59%、変化を恐れず挑戦する59%、新しいことを積極的に取り入れる58%、プロセスや努力も評価58%。以下の二項目はほぼ50%:50%。丁寧さを優先VS効率を優先、チームワークVS個人のスキル「NICOらしい」と感じる行動や価値観を聞いた二択式質問の回答まとめ


―――アンケート結果はどのように活用されたのですか。
北山: まずは寄せられた回答を分析し、NICOで大切にされている行動や価値観を整理しました。想像以上に多くの意見をいただけたので、生成AIにも力を借りました。けれど最終的には、ひとつひとつ自分の目で確かめています。
AIにまとめてもらうのは確かに効率的ですが、それをそのまま鵜呑みにしていては本当に理解したとは言えない気がして。どんな背景や思いがあってその言葉が生まれたのかそのプロセスを理解してこそ、人に伝わる説明ができると思っています。

武藤: とにかく回答が多かったので、うれしいけれど大変でしたよね。でもやっぱり読まないとわからない部分は多かったです。そこで見えてきた傾向に人事評価の観点を掛け合わせ、行動指針として4項目の素案を作成しました。

北山: その素案を部長職以上の方々に共有し、評価をお願いしました。ここでもうひとつ案が加わり、最終的に行動指針の素案は5つに。そこからいよいよ実際に社内で公開するコピーづくりへとフェーズが進んでいきました。


一人ひとりに寄り添った表現を目指して

―――行動指針を表現するにあたって、どのような点を意識されたのか教えてください。
北山: まず取りかかったのは、どういったトーンや形式で表現するかという点です。他社の事例をいろいろと集めて見比べ、方向性を検討しました。

武藤: 短いもののほうが読みやすいし覚えやすくていいだろうということで皆の意見は一致していましたが、簡潔すぎると伝わりづらくなってしまうんですよね。そのバランスがとても難しかったです。

北山: 表現そのものについてもかなり議論しました。一方的に「こうするべき」と言い切るような押しつけがましい表現になってしまうと、NICOらしくないよね、と。

武藤: 一人でも多くの方に納得いただけるものにというのは、内容も含めて本当に慎重に議論しましたよね。実は5つの行動指針のうち「いつでも真摯に」は当初案から方向性がかなり変わっているんです。



―――どのような議論で今の形に変わったのでしょう。
北山: いったん作成した行動指針のコピーを社長に見ていただいたとき、そのうちのひとつに対して「これは確かに大切なことだけれど、他のものに比べるとまだまだ根付いていない価値観じゃないか」というご指摘をいただいたんです。それよりも、もっと腹落ちしやすいような具体的なシチュエーションを取り入れたほうがいいのでは、と。
そこで練り直したのが「いつでも真摯に」です。

武藤: 今から思えば、確かにこちらのほうがより実態に即したものになったので、ありがたいご指摘でした。やっぱり自分の普段の行動や価値観とあまりにもかけ離れていると、「自分には関係ないな」と思われてしまいますから。

北山: 社長からも「今のNICOにすでに根付いているものを肯定するようなものにしてほしい」と言っていただき、改めて行動指針の方向性が確認できましたよね。

こうして揃ったのが、冒頭でご紹介した5つの行動指針です。2025年8月に行われたNICOの全体会議で、役員の方から社内に向けて正式に発表していただきました。
今後はこの行動指針の浸透を目指して、プロジェクトの活動は続いていきます。


行動指針を浸透させていくには?

―――浸透のための具体的な施策などはすでに決まっているのでしょうか?
北山: 名古屋本社と東海BPOセンターにはすでにポスターを掲示しています。壁に貼るA4サイズのものと、階段の段差部分に貼る階段ポスターの二種です。このほかコーポレートサイト上にも掲載するよう手配中です。
今後も従業員の皆さんの目に触れる機会を増やしていけるような施策を進めていけたらと思います。

ビル内の階段の、段差の部分に横長のポスターが6段分、6枚貼られている。一番上の段には「伝えることで、社会をよりよく。」の企業メッセージがあり、その下に行動指針を示した5枚のポスターが続く ビル内の壁に6枚のA4サイズのポスターが3列2行で掲出されている様子。左上の一枚は企業メッセージ、他5枚は行動指針が書かれている
名古屋本社内の階段や階段の踊り場に、ポスターを掲出しました


―――お二人としては、5つの行動指針の中で何が一番響いていますか? 

北山: 「よりよく伝える」ですね。企業メッセージとも直結していますし、やっぱりそこが中心になると思います。

武藤: 私も同じくです。人事という仕事柄、従業員の皆さんにお伝えする機会が多いのですが、思いどおりに伝わらず、伝え方って難しいなと感じることもあります。

私、自分のPCに階段ポスターのコピーをプリントしたものを貼ってるんです。階段ポスターは基本コピーの短縮版なので、「よりよく使える伝える」というキャッチコピーに「伝えたではなく、伝わったか」という短いボディコピーがついているんですけど、これが本当に大切だな、と思っていて。

うまく伝わらないと、ちょっと心がざわつくじゃないですか。そんな時にこの言葉が目に入ると、冷静になって「じゃあどう伝えようか」と考えるきっかけになるんです。

パソコンのキーボードの上、空いたスペースに細長い紙が貼りつけてある。紙には「伝えることで、社会をよりよく。」の企業メッセージと、5つの行動指針が書かれているPCに張り付けられた行動指針。コピーは階段ポスターと同じもの

北山: それ、いいアイデアですね! 好きなところに貼れるステッカーを配布するのもいいかもしれません。

あと私は「学びをやめない」もとても大事だと思います。NICOには学びをサポートするさまざまな制度が用意されていて、会社としても力を入れている部分です。みんなで学んでいけるような会社であれればと改めて思っています。


―――では最後に、このプロジェクトを振り返って、一番印象に残っている出来事を教えてください。
武藤: アンケート結果には温かいコメントが多く、行動指針づくりへの前向きさや挑戦への意識が社内に根づいていると感じました。

一方で、私自身もそうなのですが「何をどうすればいいかわからない」という戸惑いもあるのだろうと思います。NICOには、「自分が、自分が」と積極的に前に出るタイプというよりも、周囲を尊重しながら物事を進める方が多い印象です。

北山: これがNICOの社風ということなんでしょうね。他社の行動指針の中には、鋭く言い切る強い表現も多くありましたけれど、NICOはやっぱりそういう表現は似合わないのかなと思いました。

武藤: やっぱりそうなんですよね。そういった社風は大切にしていきつつ、挑戦する姿勢を持てるのがNICOなのかなと思います。
行動指針も、一方的に押し付けるようなものではなく、日々の行動の中で少しずつ意識され、自然に浸透していくといいですよね。その先で「伝えることで、社会をよりよく。」を実現していけるよう、これからも実践を重ねていきます。

北山景子

西川コミュニケーションズ株式会社
広報課 プランナー

入社後、メーカーや小売のマーケティング、プロモーションの企画を担当し、2021年からは広報業務に従事。コーポレート広報担当として企業メッセージ開発・浸透施策の推進のほか、サスティナビリティ推進も行なっている。

武藤尚子

西川コミュニケーションズ株式会社
人事課

グループ会社で総務業務、NICOコンタクトセンターにて管理業務を担当。2013年より人事課に配属となり、給与、年末調整、社会保険などの労務管理を担当。現在は人事制度をはじめ幅広い人事業務に携わっている。