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リアルとWebのアクセシビリティへの取り組みを実感する
マーケティング 2022.11.18

リアルとWebのアクセシビリティへの取り組みを実感する

多様化が進む現代、多くの人が目的のコンテンツにアクセスできることを目指すWebアクセシビリティへの対応は、もはや時代の要請となっています。

今回は西川コミュニケーションズでWebアクセシビリティ向上の提案を行っている平井のどかが、複合商業施設としてお客様と正面から向き合いアクセシビリティ対応を進めてこられたサンシャインシティ様を訪問しました。Webとリアルを通貫するバリアフリー施策の数々をご紹介いただきながら、Webアクセシビリティ対応を進めるにあたって欠かせない、アクセシビリティの重要性について改めて学びます。


サンシャインシティとは?

サンシャインシティ1階入口の写真、サンシャインシティと英語で書かれた大きな看板が入り口の上にある

5つのビルで構成された複合商業施設。水族館や展望台(※1)、ショッピングセンター、オフィス、レストラン、ホテル、博物館、劇場など、多くの機能を備えた都市空間を形成しており、毎年約3,000万人(※2)もの利用者が訪れます。
※1 現在リニューアルのため休館中。2023年春オープン予定。
※2 コロナ禍前の人数。

また、学びの場の提供や、サンゴの保全活動、省エネ・リサイクルといった環境問題への取り組み、防災への備えなど、サステナブルな社会の実現へ向けてのさまざまな取り組みが進められています。

株式会社サンシャインシティ
〒170-8630 東京都豊島区東池袋三丁目1番
設立1966年(昭和41年)10月14日
https://sunshinecity.jp/

サンシャインシティのバリアフリー対応

平井: サンシャインシティでは、施設のバリアフリー対応はもちろん、それを利用者にお知らせするためのバリアフリーサイトの公開などを通して、リアルとWebを通貫する総合的なアクセシビリティ対策を進められています。

まずはサンシャインシティの施設内のバリアフリー対応を、サンシャインシティグループでCX(顧客体験価値)※向上に取り組まれているお二方にご案内いただきます。よろしくお願いします。

※CX:Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)。機能・性能・価格といった商品やサービスそのものの価値だけでなく、商品やサービスの購入に至るまでの体験や、その商品やサービスを利用することで得た効果や楽しさ・快適さといった、感情に訴える価値の訴求を重視するもの。

植田様・金子様 よろしくお願いします。

優先トイレ

植田様: まずご案内するのが、優先トイレです。ショッピングセンター内はすべての階に優先トイレが設置されております。

ゆったりしたスペースの中にさまざまな機能が集約されており、その機能も細かい点に注意しています。例えば、手すり(写真①)は折りたためるようになっており、必要な方がご利用いただける仕様になっています。非常用の呼び出しボタン(写真②)には、万が一トイレの中で転倒した際に低い位置からでも引っ張れるよう、ボタンにひもがついています。

アルパ3F南通り沿い優先トイレの写真、跳ね上げ式手すりや、チャイルドシート、オストメイト対応トイレの設備がある写真① 手すりは利用される方の状態に応じ出し入れが可能

低い位置にある呼び出しボタンの写真、優先トイレ内で転倒した場合でも対応できるよう、低い位置からでも引っ張れるようにトイレットペーパーの右下に紐がついた呼び出しボタンがある写真② 低い位置からも手が届くよう、ひもがついた呼び出しボタン


平井:
 いろいろなことが想定されて作られていますね。

植田様: ただ、まだまだ対応が足りない点もあります。各優先トイレの機能は設置する際の最善のものを採用しているという経緯があるため、館内の優先トイレは仕様が統一できていません。

例えば今ご紹介した場所と異なるトイレでは、大人のおむつ交換にも使える簡易ベッドが備えられています。ベッドが必要な方は、このトイレとは別のトイレへ移動していただかなければなりません。

規格を統一することも今後の課題ではありますが、すぐに対応することは難しいのが現状です。どこのトイレにどの機能があるのかをお知らせするためにも、バリアフリーサイトが活きてくるということになります。

工夫を凝らしたサイン/NFCタグ付き 館内案内サイン

植田様: こちらがサンシャインシティで一番大きなサインです。ピクトグラムも、文字のひとつひとつも、大きく見やすくなるように配慮しました。もともとは設置面が大きいためこのサイズでの設置となりましたが、結果的に視覚に障害をお持ちのお客様や目の悪いお年寄りやお子さんなど、幅広いお客様に好評をいただいているサインです。

一階バスターミナル前、壁一面の大きな案内板の写真、写真左側にインタビュアーの平井が立って案内板を指さしている


平井:
 確かに特に目が悪いわけではない私でも、この大きさはうれしいですね。遠くからでもわかりやすいです。

植田様: 特に視力の弱い方は、文字を拡大して読むことができるツールを利用される方もいらっしゃいますが、そういった道具を使わずとも読めると好評いただいています。

サンシャインシティ館内を案内いただいている様子の写真、写真左側に植田さま、中央に平井、右側に金子さまが立っていて、植田さま、金子さまに説明してもらい、平井が説明を伺っている


金子様: 障害のあるなしに関係なく、ということでは館内案内ボードもそうですね。これは館内情報をスマホで取得いただくことができる、NFCタグを付けています。タグにスマホをかざすと「デジタルガイド」のサイトへと飛びます。例えばメニューの中から「館内道案内」へと進み、そこで行きたいお店をお選びいただくと、自分が今どこにいて、目的のお店はここですよ、と位置を教えてくれます。

3階の館内案内ボードの写真、ボードの右側にはスマホで読み取れるNFCタグがつけられているNFCタグ部分の拡大写真、スマホをかざしてね、というテキストがNFCタグに添えられている
館内案内ボードの横にあるNFCタグ。タグにスマホをかざすと「デジタルガイド」のサイトへ遷移する。

NFCタグから遷移したデジタルガイドのトップ画面、館内道案内やレストラン情報などのアイコンがあるデジタルガイドにて館内道案内を選択した画面、サンシャインシティのフロアマップに自分の現在地がピンで表示されているデジタルガイドにて館内道案内を選択して、目的地を設定した画面、サンシャインシティのフロアマップに自分の訪れたい目的地がピンで表示されている
デジタルガイドの画面。現在地と目的地が表示されている

植田様: ルート案内まで表示はできないのですが、社内調べでは現在地と目的地が表示されればたどり着ける方が多いということがわかっています。

弊社の場合、特に重要なのは現在地ですね。サンシャインシティは複数の施設が集まっていてどうしても構造が複雑なため、現在地がわからなくなるという声をよくいただきます。そこで、サインもそうなのですが、現在地をお知らせするというのをまず大前提にしています。

金子様: デジタルガイドはそれをすぐにお知らせできるのがメリットですね。

平井: 確かに、館内にサインがたくさんありますが、現在地が何階なのかを示しているものをよく見かけます。

植田様: 駐車場すぐの入口にもNFCタグ付きのサインがあります。車で来館された方は、まずここで行き先をチェックされる方が多いので、その際デジタルガイドをご利用いただけるようにと設置しました。このほか、お客様が迷いそうなところ、位置の情報が必要であると思われる場所に設置しています。

平井: 障害のあるなしに関係なく、お客様に必要な情報がわかりやすく提供できるように工夫されているのですね。

サンシャインシティ駐車場の地下2階のエレベーター前の写真、エレベーターボタンの右横に、デジタルガイドに遷移できるNFCタグが設置されている

案内所

植田様: 施設には案内所も複数あり、館内のご案内や、車いすやベビーカーの貸し出しなど、さまざまなサービスをご提供しています。複数の外国語での対応はもちろん、筆談によるご案内も受け付けています。

金子様: バリアフリー対応といっても、施設設備そのもの、つまりハード面でできる部分はどうしても限界があります。ではそれをどうやって補うのかと考えたとき、そこはやはりソフト面、つまり人による対応が重要になります。案内スタッフの対応もそのひとつですし、他にも介助資格のあるガイドヘルパーに常駐いただき、いざというときに対応できるようにしています。

サンシャインシティ内の案内所デスクの上にある看板の写真、案内所で受けられるサービスが記載されており、駐輪場サービス券発行所、という文字と筆談でのご案内をいたします、という文字が看板に書かれている筆談でのご案内も受け付けています。

サンシャインシティ内の案内所のそばにある車いす貸出サービスの看板の写真、利用可能時間や、車いすを利用できるエリアなどの情報が看板内に詳細に記載されている案内所の近くに10台以上のベビーカーが並んでいる写真
車いすやベビーカーの貸し出しサービスもあります

駐車場 障害のある方専用駐車スペース/思いやりスペース

植田様: 駐車場には障害のある方専用のスペースを設置しています。また、専用の駐車スペースとは別に、乗り降りにちょっとしたサポートが必要な方にお使いいただける「思いやりスペース」を設けています。高齢者や、一時的な怪我でサポートが必要な方、妊婦さんや小さいお子さん連れの方など、いろいろな方にお使いいただけます。

サンシャインシティ駐車場の地下2階のエレベーター付近にある、車いす専用の駐車スペースの写真、駐車スペースが青く塗られていて、車いすのピクトグラムが描かれており、駐車スペースの前には看板が立っていて、車いすのピクトグラムが記載されている

サンシャインシティ駐車場の地下2階のエレベーター近くにある、思いやりスペース、と記載されている駐車スペースの写真、思いやりスペースの文字の下にピクトグラムが4つ並んでいて、松葉杖をついている人、杖をついている人、ベビーカーを押している人、妊婦さんのピクトグラムが描かれいる

平井: 確かに、車いすではないけれど優先スペースのような、乗り降りしやすい駐車エリアの需要はありますね。こういった駐車スペースがあると安心して来訪していただけますね。

サンシャイン水族館

植田様: 青の背景に白い文字でデザインされた水族館のサインは、今年の3月に実施したUD調査※でも見やすいと評価をいただきました。

※UD(ユニバーサルデザイン)調査:さまざまな障害のある方に施設内を巡回いただき、危険な箇所や利用しづらい箇所はどこかといった施設面での課題の抽出を目的とした調査

金子様: 設置場所はさまざまですが、周囲の明るさが変わってもはっきり見えると評価いただきました。

サンシャイン水族館にある塀の上部に掲載されている道案内サインを金子さまが手を伸ばしてご紹介してくださっている写真、看板は青い背景で、屋内エリア、順路と白い文字で英語表記とともに記載されているサンシャイン水族館にあるエレベーター前にあるサインの写真、看板は濃い青い背景で、車いすとベビーカー優先のエレベーターであることを表示するピクトグラムや、化粧室のピクトグラム、2階への順路が矢印とともに白い文字で記載されている、2階への順路は英語表記とともに記載されている


植田様: UD調査では、有益な改善点のご指摘もいただきました。こちらはそのご指摘を基に改善した部分です。この段差の端に、視覚障害者へ段差を知らせるための鋲がついていたのですが、これがあまり用をなしていなかったことがわかりました。

金子様: この鋲の間隔では白杖がすり抜けてしまうので、あまり意味がないというご指摘をいただきました。そこで今は鋲を取り、これまで1本のみであった滑り止め部分を2本に増やし、線を強調することで遠目でも段差の端をお知らせできるようにしました。

サンシャイン水族館屋外エリアにある段差の写真、段差のふちにあった鋲が外されている跡があり、代わりに段差のふちに幅広く滑り止めの加工がされている屋外エリアの段差にある、滑り止め加工を金子さまの指が指差ししている写真
鋲(赤枠内)の代わりに滑り止めの部分の幅を倍に広げることで段差をお知らせ

平井: バリアフリー対応を行うだけでなく、ユーザーの目線でUD調査をしてもらうことで、より良いバリアフリー対応が実現できるのですね。
そして調査結果をすぐに反映させていることも、バリアフリーサイトで告知したいくらい、素晴らしいと思いました。




平井: 多くの方に施設を使っていただけるように、という工夫がここでは紹介しきれないほど館内至るところにあふれていますね。ご案内いただきありがとうございました。

植田様: 以前からお客様の声をもとに足りないところを付加していった結果ですね。もちろん細かいバリアはまだまだありますが、大きな部分は以前に比べ対応できてきたと思います。

平井: 館内を案内していただいた際も、こういったお客様の声があって、というお話をよくお伺いしました。お客様からの声に応えてといったパターンは多いのでしょうか。

金子様: 私たちのチームは、お問い合わせフォームや案内所の現場でいただくお声を日々確認しています。お叱りもあれば、純粋なお問い合わせだったりもするのですが、そのお声の中から改善していることはとても多いですね。
お客様からお声をいただくことで、効果的な改善ができていると思います。

植田様: いただいたお声を基に改善しているうちに、施設改善のご要望をいただくことが徐々に減ってきました。とはいえまだまだ対応が足りないところがあります。今後はハード面の改善だけでなく、スタッフでケアできるところもさらに進めていこうというのが今の状況です。


ソフト面からリアルのバリアをカバーする「バリアフリーサイト」

平井: バリアフリーサイトの公開に至ったのも、施設設備、いわゆるハード面だけではないソフト面での対応も考えられてのことなのでしょうか?

サンシャインシティのバリアフリーサイト、トップページの画像サンシャインシティ バリアフリー情報サイト

植田様: そうですね。本サイト制作に至る前に、まずはハード面とソフト面でどのようなバリアがあるのかを考えるためのチームを立ち上げました。その際、日本バリアフリー推進機構理事長の中村元様にお話を伺う機会があり、そこでお聞きしたのが、とにかく情報開示が大事だということでした。

リアルな施設の場合、どこかしらに必ずバリアがあります。誰にでも確実に100%バリアフリーな場所というのはありえないのだから、「バリアがここにある」とお知らせすることが大事だと教えていただきました。

ただ、それを施設で情報開示したのでは意味がありません。来訪いただく前に情報提供をすることで安心感を得てサンシャインシティに訪れていただくことができるため、バリアフリーサイトの構築がスタートしました。

平井: 施設での情報開示では、実際にその場にこなければ情報を得られないからということですね。

植田様: 例えば先ほどご案内したように、トイレも仕様がさまざまです。障害のある方でも、障害によって必要な設備が異なるため、優先トイレならどこでもいいというわけではありません。必要としている設備があるかどうかわからない場合、最初から行かないという方も多いそうです。

平井: 優先トイレをいろいろな方に使っていただくためには、そのトイレが使えるのかどうかを判断するための材料となる情報を、事前にお届けする必要があるのですね。となるとやはりご自宅からでも確認できるWebサイトからの情報発信が最適になりますね。

植田様: 特に車いすの方などは、トイレに行く時間まで計算して予定を立てると伺いました。ここのトイレなら確実に使えるということをチェックした上で、こういうルートでこの時間に行こうと、時間配分までを考えるとのことでした。そして、自分が安心して行ける、通いやすい場所が見つかれば、そこを日常的にご利用いただけるようになるそうです。

私達がバリアフリーサイトを制作することで、サンシャインシティに来るきっかけが少しでも増やせればいいですね。皆さんが外出したいという気持ちの後押しにもなりますし、それが最終的に会社の収益にもつながればと考えています。

サンシャインシティの会議室にて金子さま、植田さまが座っていて、会議室の机を挟んでその対面に平井が座っている写真、金子さまがお話されているところを植田さま、平井が伺っている

平井: 先ほどの見学中も、施設内に車いすの方をお見かけすることが多いなと感じていました。やはりそういった情報開示が効果を発揮しているのですね。

植田様: 安心してお越しいただける施設づくりができているのならいいですね。

平井: バリアフリーサイトの公開後、反響や意見はありましたか?

植田様: 障害のある方からは、バリアフリーに特化したWebサイトがあることが嬉しいとよく言っていただけます。障害者割引の情報等もサイト内に掲載しているため、便利だという声もよくいただきますね。

金子様: 社内の反応としては、サンシャインシティが属する三菱地所グループ内で、人や街に貢献した活動を表彰する「ひとまち大賞」制度の「顧客志向賞」をいただきました。また今回のような形でほかの企業様から取材を受けたり、メディアに取り上げられたりすることも増えました。

植田様: バリアフリー情報に特化したサイトを作っている企業は少ないようで、いろいろな場面でサイトのお話をする機会が増えました。皆さんそういったサイトの必要性について意識はしているけれど、なかなか作れないといった状況のようですね。

金子様: しかし一番嬉しいのはやはり一般のお客様からのお声です。しかも、障害のある方だけではなく、もっと幅広くいろいろな方に喜んでいただけています。
小さなお子さまがいらっしゃる方から、「ベビーカーに関する情報を事前に調べることができてとてもよかったです、サイトも見やすいです」とのお声をお問い合わせフォームから寄せていただいたこともあります。フォームに入力いただくというのは、数分とはいえ貴重な時間を割いていただいているわけですから、そういった点も含めとても励みになっています。

植田様: 障害者対応をメインにスタートした取り組みですが、幅広くいろいろなお客様にお使いいただけるサイトになったと感じています。

平井: 当初の目的以上の結果が出ているのですね。バリアフリーサイトの今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか?

植田様: 今は車いすのユーザーに特化した内容になっているので、聴覚や視覚が不自由な方への情報もアップデートしていきたいと考えています。

その後は、サイト自体のユーザビリティの向上ですね。読み上げ機能への対応や、配色も今以上に読みやすくしていきたいと考えています。

また、サイトをご利用される方ももっと増やしていきたいです。ベビーカーをお使いのお客様などにももっとご利用いただきたいのですが、アクセス数からして対象となるであろう皆様には届いていないように見受けられます。まだまだ伸びしろがあるなと思っています。

タイトルが「バリアフリーサイト」であることもあり、障害のある方以外への告知はまだまだだと感じています。お客様からのお声に応える形でバリアフリー対応を進めてきましたが、今は障害のあるなしに関係なく、とにかくお客様と向き合うためにアクセシビリティは無視できないということを実感しています。このバリアフリーサイトもアクセシビリティの重要なツールであり、こういう情報サイトがあるということをいろいろなお客様にどう認知していただくか、これから考えていかなくてはと思っています。


リアルもWebでも、一人ひとりと向き合うこと

平井: ではここで基本に立ち返って、バリアフリー対応を進める上で大切にされていることについてお聞かせください。

植田様: 私たちが知っていくことが何よりもまず第一歩であり、大事なことだということですね。

やはり私たちが思っていることと、実際に障害をお持ちの皆様が見る視点は違うということを、これまでの活動を通して実感しました。疑似体験として、障害を体験することができてもそれは断片的であり、日常的に不便に感じるポイントをすべて想像することはできないというのが正直なところです。

どのようなことに苦労なさっているのか、できること・できないことは何なのかを、理解できれば障害に対する意識も変わりますし、接し方も絶対に変わってきます。

金子様: バリアフリーについて知る、考える機会をなるべく増やすことが重要だと私も感じています。それは担当している自分たちだけではなく、周囲の人たちに広げていくことも含めてです。

例えば、昨年障害をお持ちの方と弊社グループ社員でワークショップを開催したのですが、ワークショップ実施の際は他の業務を担当しているメンバーも巻き込み、巻き込みきれなかったメンバーに対してもプレゼンテーションを通じて周知してきました。

バリアフリー対応はお金をかければいいという話ではなく、知恵と工夫でカバーできる部分もあります。そして何より、それに対して気づく、思いやることのできる人を社内で増やしていくことがまずは大切なのではと思っているのです。

平井: 社内に対する影響も、確かにアクセシビリティ対応をすることの意義のひとつですね。バリアフリーやアクセシビリティ対応を進めることが、業務に直接関わらない社員のモチベーションを上げるきっかけにもなりうるということですね。

植田様: それから、私たちが障害者の方に向けて考えることが、結果的に楽しいことに繋げることができれば、それは他にも波及するという思いも大事にしています。
「なんか面白いこと、ある。」がサンシャインシティのキャッチフレーズであり、お客様に向き合ってその声にお応えしてきた結果として「サンシャインシティだったら楽しいことが体験できるから、また行こう」と思っていただけるようになることにつながってほしいと考えています。

私たちはCX(顧客体験価値)向上のためのチームであり、バリアフリー対応もその一環です。これらの活動はすべてCX向上につながると確信し活動しています。健常者だろうと誰だろうと関係なく来ていただけるようにするというのが、一つの目指すべき道です。

金子様: お客様の体験価値を高めるための活動が、結果としてバリアフリーやインクルーシブへの対応になっていくのではないでしょうか。

アクセシビリティ対応は課題解決のためのものと捉えられがちですし、「障害者差別解消法」の改正などもあって対応を迫られている面もあります。もちろんそこに対応していくことは当たり前なのですが、やはりお客様の体験価値をどう高めるのかというストーリーの中で、誰にでも楽しんでいただけるような施設にしていくことがサンシャインシティにとっての最大の価値だと思っています。

▼バリアフリーとインクルーシブの違いについて、詳しくはこちら
Webアクセシビリティの現在地 〜よりアクセシブルなWebサイトであるために~【第1回】

平井: バリアフリーやアクセシビリティ対応は、マイナスを0にまで持っていくという話になりがちですが、障害のある方だけではなく、あらゆる人にとってプラスとなるようにしているということですね。

植田様: 私たちのCX向上スローガンは「私の毎日はお客様の初めて、その一回に心を込めて」です。

私たちはこの施設内にいることが当たり前ですが、お客様は初めてお越しいただいているかもしれません。その一回一回にどれだけ心を込めて接することができるかで、サンシャインシティに来てよかった、また来ようと感じていただけると思います。そう思っていただければ、私たちの仕事は成功なのです。

ですので、バリアフリー対応を含め、いろいろな形のおもてなしを実現したいと思っています。やるべきことは次から次へと出てきますが、それを私たちも楽しみながらやっていきたいですね。

平井: リアルでお客様と向き合っていらっしゃるからこその考え方ですね。Webだけで考えてしまうとその先にいる人の姿が見えにくいこともありますが、実際にはWebをご覧になっている多くの方々がいらっしゃいます。その一人ひとりのことをリアル同様に考え、Webアクセシビリティを進めなければいけないと感じました。 ありがとうございました。

CX向上につながるアクセシビリティ対応について、興味のある方はこちらから

お問い合わせ

金子 実和子様

株式会社サンシャインシティ
コミュニケーション部ミドルマネージャー
前職ではメーカーの販売部門で小売業への消費者起点の売り場づくり提案などを担当。2020年4月に株式会社サンシャインシティに入社し、現在はCXチームにてお客様からのお声の窓口からWeb・SNS運用およびアプリの立ち上げなど、担当業務は多岐にわたる。

植田 麻衣子様

株式会社サンシャインシティ
コミュニケーション部リーダー
株式会社サンシャインシティに入社後、S・C(ショッピングセンター)事業部にて専門店の営業等を担当後、コミュニケーション部へ異動。金子様とともにCXチームに所属し、バリアフリーサイトの構築から携わる。現在はバリアフリー推進を活発化すべく活動中。

平井 のどか

西川コミュニケーションズ
デジタルトランスフォーメーション・サービス
エンジニアリング/プランニング・コーディネイター
西川コミュニケーションズ入社後、Webサイトの制作、進捗管理を担当。現在はDX事業部でプランニングに携わり、Webアクセシビリティ向上の提案を行う。