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生成AIと正しく付き合うには? 組織のパフォーマンスを最大化するNICOの挑戦

グループを横断する「生成AI社内活用チーム」
―――西川コミュニケーションズ(以下、NICO)は現在、どのような体制で生成AIの活用を進めているのでしょうか。
藤井: グループ内を横断したAIプロジェクトの分科会として、「生成AI社内活用チーム」が2024年にスタートしました。
「名古屋の中小企業で生成AI活用No.1」という目標を掲げ、私のような営業サイドのNICOスタッフや、技術的な話にも明るいsodaのスタッフなどが、一緒になって生成AIの社内活用を推進しています。
金牧: AIプロジェクト自体は幅広くAI活用に取り組んでいます。私もこのプロジェクトで、sodaが提供しているエリアスコアリングやMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)といったAIサービスの開発や拡販に取り組んできました。
やがて生成AIが登場し、社内活用という新たなテーマが生まれたことで、この分科会が生まれたという経緯ですね。
エリアスコアリングやMMMについて、詳しくはsodaの公式サイトをご覧ください
soda Inc. | データ利活用・分析・AI開発
―――生成AI社内活用チームではどのような取り組みをしてこられたのでしょう。
藤井: チームが始動した当初はまだまだ生成AIの認知度が低く、まずは生成AIに触れていただくことからのスタートでした。一部の方からChatGPTの有料プランを使用していただき、その人数を徐々に増やしていきました。
その後、利用が拡大するにつれて必要になってきたのが、正しく活用するためのルールや教育です。情報漏洩や著作権侵害を防ぐためのガイドラインを策定したり、学習コンテンツを用意したりと、取り組みの内容はその時々で変わってきました。
現在はプロジェクトのメンバーとは別に、各部署で前向きに取り組んでくださる方を推進役と決め、その方々がメインとなって業務単位での活用を進められるようにサポートしています。そこで生まれた事例を社内に共有し、それを参考にしたさらなる自発的な活用を促しています。
―――社内活用はどのくらい進んでいますか?
藤井: 2025年12月に実施した社内アンケートの結果では、生成AIを利用する頻度が「ほぼ毎日」「週数回」という従業員が半数を超えています。2024年8月に実施したアンケートと比べると、質問事項が異なるので単純な比較は難しいのですが、生成AIの利用が当たり前になってきていると感じますね。
NICOおよびdiggin、soda、フェム マーケティング ハウスに所属する社員へのアンケート結果
(2025年12月実施)
―――利用方法としてはどんなものが多いのでしょう。
藤井: アンケートで上位に来ているのは、やはりメールなどの文章作成や企画のアイデア出しといった基本的な使い方です。個人でプロンプトを工夫してご自身の業務に取り入れていただいているようです。
NICOおよびdiggin、soda、フェム マーケティング ハウスに所属する社員へのアンケート結果
(2025年12月実施)
一方で業務単位での活用事例も、各部署の推進役がメインとなって生まれています。すでにインフラサポート部門や人事課がNotebookLMを利用してAIチャットボットを立ち上げ、従業員からの問い合わせ対応に導入しました。
また従業員が独自にGeminiを活用してChromeの拡張機能を作ったという事例もありました。これは私も知ったときには「こんなこともできるんだ」と驚きました。この事例を参考にしてRPA※を作り始めている方もいて、蓄積された知見が次につながっていく好循環が生まれています。
※RPA:Robotic Process Automation。PC上で行っている業務を自動化できるソフトウェアロボット技術のこと
直面した「手段の目的化」という壁
―――社内での活用は、かなりスムーズに進んでいるように見受けられます。
藤井: 皆さん工夫して自分の業務に取り入れて、当たり前に生成AIを使う環境になってきていると感じます。一方で、業務全体の改善や効率化というと、なかなか活用が進まない場面もあるんです。
―――なぜそういったことが生じるのでしょうか。
藤井: 一番の壁だと感じるのは、生成AIを使うことが目的化してしまうことです。生成AIはあくまでも業務改善の手段のひとつなのに、目的と手段が逆転してしまう。
生成AI社内活用チームのスタート当初から、金牧さんとそういった懸念は話していましたよね。しかし、実際に進めてみるとやはりそこに陥ってしまうことがあって。
金牧: 生成AIを使って何をするのかという文脈で使おうとすると、実際のタスクの中にうまく入れ込めなくなってしまうんですよね。
本来なら業務のどこにボトルネックがあるのかとか、改善すべきところはどこなのかといった整理がまずあって、それをどう解決していくのかと考えたときに生成AIが選択肢として現れるべきなんですが。
藤井: 最初に「生成AIを活用しよう」と大きく掲げすぎてしまったのかもしれません。主語が「生成AIで何かを改善する」ことに変わってしまうと、たちまち何からすればいいのかがわからなくなるんですよ。
金牧: NICOに限った話ではないし、生成AIに限った話でもない。こういったツールや技術の導入全般によくある課題ですね。
必要になるのは、生成AIへの正しい理解
―――では、手段の目的化を防ぐために、どのような対策をされていますか。
藤井: まずは各部署の推進役と連携しながら、主語を「課題解決」に据えた生成AI活用を粘り強くサポートしていきます。
また、これはAIプロジェクトとは別の教育プロジェクトの取り組みなのですが、社内メルマガ「生成AI Letter」にも期待しています。文面はsodaのメンバーが執筆しているんですよね。
金牧: はい。皆さんに生成AIをより身近に、かつ正しく理解していただけるよう、sodaのスタッフが持ち回りで解説記事を執筆することになりました。
2025年12月からスタートして月に1本で全12回、一年かけてお届けします。単に目を通しただけで終わらないよう、必ず感想を記入していただくまでがセット。最初に取り上げたテーマは「ワークスロップ」です。
―――聞き慣れない言葉ですが、「ワークスロップ」とは一体何でしょうか。
金牧: 「一見完成しているようで実は品質が低く、修正に余計な手間がかかるAI生成コンテンツ」のことを指します。
例えば会議の議事録を生成AIに作成させると、実際の会話とはズレた内容になっていて、結局内容を確認し直さなければならなくなった、などの状況です。言葉としては新しいものですが、経験のある方は多いのではないでしょうか。
―――確かに、中身が薄いと感じるテキストを目にする機会が増えた気がします。
金牧: AIの表現力が高くなったことで、パッと見の体裁が整ってしまい、実は品質が低いことに気付きにくくなっているんです。簡単にプロンプトを入れるだけで、生成AIがすべて解決してくれるような気がしてしまう。その誤解が、先ほど話したような目的と手段の逆転にもつながっています。
―――便利さゆえの落とし穴ですね。なぜ私たちは、AIを過信してしまうのでしょうか。
金牧: チャットによる自然な受け答えのせいで、AIがちゃんと考えて答えているように見えてしまうんですよね。基本は確率的に予測されたものを返しているだけで、理解しているわけではないのですが。
また、私たちは知らず知らずのうちに暗黙知の中で判断していることがたくさんあります。過去の経験や、何となくの感覚です。AIにはそれがわかりません。そこを補う情報を人間が与えない限り、正しいアウトプットは得られないんです。
つまり、指示を出すインプットで差が生まれ、アウトプットしたものの良し悪しを判断するときにも差が生まれます。結局、人間の能力――「言語能力」や「論理的思考能力」といった部分が追い付いていなければ、スロップが生まれるんです。
―――そういったことを知っているだけでも、生成AIへの向き合い方が変わってきそうです。
金牧: そこが生成AI Letterの狙いです。ワークスロップがどうして発生するのか、どうすれば回避できるのかを通して、生成AIをどう業務に取り入れていけばいいのかを考えていただければと思います。

機密を守り、知恵を共有するプライベート生成AI
―――技術的な面ではいかがでしょうか。実務で安心して使うためには、システム的な安心感も不可欠ですよね。
藤井: そうなんです。どれだけ使い方のスキルを磨いても、セキュリティの不安があっては大胆な活用はできません。NICOでは顧客の機密情報を多く取り扱っていますから、どうしても、外部のLLMサービスに入力できない情報は出てきます。
また、個々人で行なっているAIとのチャットをグループチャット化して、社内の関係者+AIとで共有チャットとして対話したい、AIとの対話を通じた意思決定プロセスを従業員に見える化したい、という思いも強くありました。そこで立ち上がったのが、独自の環境で安心して使えるプライベート生成AI「GeNica(ジェニカ)」です。
GeNicaのログイン画面。ロゴやインターフェイスのデザインもNICOスタッフによるもの
金牧: sodaと、同じくグループ会社であるNICOインディアが協力して開発しました。現在、3月にはNICOグループの全従業員向けにリリースできるように、ガイドラインや運用ルールの整備を進めております。
NICOインディアについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください
―――外部ツールからGeNicaへと切り替えていく予定なのでしょうか?
藤井: いいえ、これまで使用してきたビジネスプランのGeminiなどの外部ツールも、データ管理ポリシーなどを考慮しながら必要に応じて引き続き活用していきます。
使い分けやルールの整理はこれからになってくるのですが、個人の生産性向上を目的に、社外共有が可能な情報のみを扱うのであればGemini、機密性の高い社内データを扱いながら、NICOの業務プロセスを変革していく場合には、GeNica。そんな立ち位置になるのではないでしょうか。
金牧: 外部ツールは自由にコントロールできないという点もデメリットなんです。Geminiに「こういう処理はできるようにしよう」「逆にここは制限しよう」といった調整はできませんから。その点、GeNicaなら自分たちですべて制御できるので、よりNICOの業務に特化したものに育てていけます。
藤井: 現在のGeNicaはまだ第1フェーズで、これから第2、第3フェーズへと続いていきます。特に、GeminiのGemのような、特定の目的やタスクに合わせてカスタマイズされたAIアシスタントを共有する機能。これは従業員からの要望も多く、また業務プロセスの変革には不可欠なので、NICOに合ったものをGeNicaでも使えるよう実装を進めています。
―――守りを固めるだけでなく、NICO専用のAIに育てていくということですね。
藤井: はい。社内でナレッジを共有してよりNICOの業務に特化させ、会社の資産となるものとしていきます。GeNicaを活用してどう業務を改善していくのか、今後はそこにフォーカスして開発を進めていくことになります。
拡張はAI、収束は人。AIを使いこなし、成果へ繋げる
―――学びや環境といった武器が揃っていく中、生成AIを実際の業務成果に結びつけるために、改めて大切にすべきところはどこでしょうか?
金牧: やはり生成AIはあくまで手段であり、自分のパフォーマンスを上げてくれるものだということですね。肩代わりしてくれる存在と思ってしまうと盲目的になってしまいますが、パフォーマンスを上げるためのものとして捉えていれば、最終的な答えは自分が出すことを忘れずにいられます。
藤井: 「自分のパフォーマンスを上げるため」というのはわかりやすくていいですね。成果を出すのはAIではなく、あくまでAIを使った人と組織。それは私たちがもっとも認識しておかなければならないことだと改めて感じます。
金牧: 実際、sodaのメンバーは業務に組み込んだり開発に利用する以外の使い方として、答えを求めるといった「収束」させるような使い方はあまりしないんですよ。他に切り口や手段、自分たちが思いついていない可能性はないか、そういった自分の発想を広げる「拡張」のために使っています。最後にどの答えに絞り込むかという「収束」の基準は、常に自分たちが持っていなければなりません。
―――AIとの適切な距離感が見えた気がします。では、そうした個々のスキルを活かして、組織として今後はどのような価値を追求していきたいですか?
藤井: 生成AI社内活用チームの軸は、やはり業務改善です。その取り組みによって工数がどれだけ削減され、品質が向上し、最終的にどれだけの利益に繋がるか。まずはそこをしっかり追求すべきだと考えています。
そしてその先で、お客様への新たな価値提供へとつなげていく。AIを単なる効率化の道具ではなく、パフォーマンスを最大化するためのパートナーとして活用し、NICOはこれからも進化を続けていきます。
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お問い合わせ藤井隆雅
西川コミュニケーションズ株式会社 DX事業部 DXビジネスグロースG グループマネージャー 不動産、流通小売、自動車メーカーでの営業経験を経て、クライアントのDX推進を目的としたローコード開発業務改善支援チームを自ら設立。現在は、顧客がコア業務に専念できる環境づくりのため、サービス企画から運用サポートまでを統括するマネージャーに従事。あわせて、社内生成AIプロジェクトのリーダーを担う。
金牧伸弥
株式会社soda Chief Operating Officer 調査、POSデータや顧客データ分析を基にしたマーケティングコンサルティング、 プロモーションプランの立案に従事。また大学や企業との共同研究を積極的に行い、マーケティングサイエンス学会等で発表。 株式会社soda設立に伴い、2019年7月より立ち上げメンバーとして参加。
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